夢ででも会いたい人がいます。
言えてない一言があるので。
夢の中ででも、言えたらすっきりすると思うのに。
色々な人が夢に登場してくれますが、その人だけは、別れてから20年。
一向に登場してくれません。
大卒で入社した会社での新人研修は、3ヶ月間、横浜での寮生活。
外周を取り囲むフェンスの上には有刺鉄線が付けられ、門限重視で規則に厳しいオトフジさんという寮長が居た。寮に帰れば名札をひっくり返すって言う古き良き時代の独身寮。
毎晩飲みに行くが、週休二日制の週末の夜は暇を持て余していた。そんな男ばかりの生活で生み出した楽しみの一つに青臭い話をするサークル活動、「青クサークル」というのを作ったヤツがいた。
そこでは、ついこの間まで過ごしてた大学生活や高校生時代の青臭くなる恋話をしては
「アオクサー!」と言って、ヤツがえびぞりになる・・・ポチャっとした巨体がえびぞりをするものだから、その姿が面白く、ゲラゲラ笑いながら、青臭い話をしていた。
1992年・・・まだ携帯電話も辞書みたいな大きさで、メールもインターネットもない時代。
音楽はラジカセ、思い出を共にした曲をかけながら、小汚い男の部屋で4〜5人集まって、青臭い話を肴に、乾き物とアルコールを・・・
曲は「はじまりはいつも雨」ASKA・・・君に逢う日は不思議なくらい雨が多くて・・・
二人とも車で通学してたので、迎えに行ったり、来てもらったり。
あっちの授業や実験が終わるまで、喫茶室で時間つぶしをして、一緒に帰ったり。
バイトが終わってから、家まで迎えに行って、夜のドライブをしたり。
そんな夜のドライブで、歌詞の通り、雨が多くて、その曲を聴きながら、「雨女!」って言って笑ってた。
別れた理由は、ほんま、ガキっぽい。
後悔だけが延々と残っていた。
卒業式でも一緒に写真を撮ることもなく、一緒の写真が一枚もないまま・・・
あの日から20年、忘れてたり、思い出したり。夢の中でもええんで、言いたい言葉があるのに、夢にさえ出てこない。
でも昨日、初めて登場してくれた。
別になんてことないねんけど、○○ちゃ
ん?って聞いて、「うん」と頷かれた後、こっちはなんか指名手配の犯人見つけてバタバタして、振り返ると当時のままの雨女がバス停にいて、こっちは指名手
配の犯人ともみ合いながら、「あっ!言わな!あの言葉!」って振り返ったらもう居なかった。夢やから話ぐちゃぐちゃになったけど。
結局、言えてないんやけどね。
なんとなく、出てくれただけでも ありがとう!って感じで。
今日、大阪からの帰り道、湊川〜若宮事故渋滞3kmの表示を見て、
生田川で降りて新神戸トンネルへ回った。
別に渋滞3kmで迂回する必要もないねんけど。
箕谷で北神戸線には入らず、出口を出た。
懐かしい道を通りながら、昨夜の夢を思い出したら、通いなれたはずの場所を探してみたくなった。
ソコにおるわけでもないねんけどね。
家の前でクラクション鳴らせば、雨女が玄関から出てくるって言うのは20年前の話で、今はそんなことあるわけもないし、期待してるわけでもないねんけどね。
途中まではココや!と思えたけど、道も町並みもすっかり変わってた。
新しい家に建て替えられてたり、病院が出来てたり。
新しい知らない町みたいに、20年ぶりに踏み込んだソコは、あまりにも見慣れない風景に見えて、結局たどり着けずに終わった。
別になんてことはないけど、嫁さんには言ってない、たぶん誰にでもある青臭い思い出やね。
時々、わけもなく思い出すんです。